相続財産の中に、上場株式や投資信託が含まれているケースは少なくありません。
近年は、証券口座やNISA口座で株式・投資信託を保有している方も増えており、相続税申告の際に「どの金額で評価すればよいのか」「相続後に売却した場合の税金はどうなるのか」といったご相談をよくいただきます。

特に注意が必要なのは、相続税申告における評価額と、相続後に売却した場合の所得税上の取得費は、必ずしも同じではないという点です。

本記事では、相続した上場株式・投資信託について、相続税評価、配当金、譲渡益、取得費の注意点を整理いたします。

相続した上場株式の評価方法

相続税申告では、上場株式は、原則として被相続人が亡くなった日(相続開始日)の最終価格(終値)により評価します。

ただし、上場株式は日々価格が変動するため、相続開始日の終値だけで評価するわけではありません。
相続開始日の終値が、次の3つの価額のうち最も低い価額を超える場合には、その最も低い価額により評価します。

【上場株式の評価で比較する価額】

  • 相続開始日の終値
  • 相続開始日の属する月の毎日の終値の月平均額
  • 相続開始日の属する月の前月の毎日の終値の月平均額
  • 相続開始日の属する月の前々月の毎日の終値の月平均額

実務上は、これら4つの金額を比較し、最も低い価額を確認することになります。
たとえば、亡くなった日の株価が一時的に高かった場合でも、前月や前々月の月平均額を使うことで評価額が下がるケースがあります。

なお、相続開始日が土日祝日などで終値がない場合や、権利落ち・配当落ちなどがある場合には、一定の修正が必要となる場合があります。
そのため、証券会社から取得する残高証明書だけでなく、必要に応じて過去の株価資料や評価明細書を確認することが重要です。

投資信託の評価方法

投資信託については、原則として、相続開始日に解約請求または買取請求をしたと仮定した場合に、証券会社等から支払いを受けることができる金額により評価します。

一般的な投資信託では、基準価額、口数、信託財産留保額、解約手数料、源泉徴収される税額相当額などを踏まえて評価額を計算します。
実務上は、証券会社が発行する相続開始日時点の残高証明書評価額証明書をもとに確認することが多いです。

【注意点】ETF・J-REITなどの上場商品

ETFなど金融商品取引所に上場されている投資信託については、通常の投資信託のような解約請求等を前提とした評価ではなく、上場株式の評価方法に準じて評価します。

「投資信託だからすべて基準価額で評価する」と考えると誤りになる場合があります。
上場されている商品か、非上場の投資信託かによって評価方法が異なる点に注意が必要です。

配当金・分配金の注意点

上場株式や投資信託を相続する場合、株式や投資信託そのものだけでなく、配当金・分配金の取扱いにも注意が必要です。

相続開始日時点で、すでに配当や分配金を受け取る権利が発生しているにもかかわらず、まだ入金されていないものがある場合には、未収配当金等として相続財産に含める必要がある場合があります。

一方で、相続開始後に相続人が受け取る配当金・分配金については、所得税の配当所得として取り扱われる場合があります。
上場株式等の配当等は、一定の場合には確定申告不要制度を選択できますが、譲渡損失との損益通算や繰越控除を行う場合などには、確定申告が必要となることがあります。

【実務上の確認ポイント】

  • 相続開始日時点で未収配当金・未収分配金がないか
  • 配当基準日、配当決議日、支払日を確認する
  • 証券会社の残高証明書・取引報告書に未収配当金等の記載がないか確認する
  • 相続後に受け取った配当金について、所得税の申告要否を確認する

相続後に売却した場合の譲渡益

相続した上場株式や投資信託を相続後に売却した場合、売却益が出れば、原則として所得税・住民税の課税対象となります。
株式等の譲渡所得等は、給与所得や不動産所得などとは区分して計算する申告分離課税の対象です。

特定口座(源泉徴収あり)で売却した場合には、原則としてその口座内で源泉徴収が行われ、確定申告不要とすることができます。
ただし、次のような場合には、確定申告を検討する必要があります。

【確定申告を検討すべき主なケース】

  • 複数の証券口座の損益を通算したい場合
  • 上場株式等の譲渡損失を翌年以後に繰り越したい場合
  • 配当所得等と譲渡損失を損益通算したい場合
  • 相続財産を譲渡した場合の取得費加算の特例を受けたい場合
  • 一般口座で売却し、譲渡益が出ている場合

「源泉徴収ありの特定口座だから何もしなくてよい」とは限りません。
申告することで有利になる場合もあれば、申告により扶養・社会保険・各種判定に影響する場合もあるため、状況に応じて判断することが大切です。

取得費の注意点:相続税評価額が取得費になるわけではない

相続した株式や投資信託を売却する際に、特に誤解が多いのが取得費です。

相続税申告では、上場株式や投資信託を相続開始日時点の一定の評価額で計上します。
しかし、相続後に売却する場合の所得税上の取得費は、原則として被相続人が取得したときの取得費を引き継ぎます

【よくある誤解】

「相続税申告で評価した金額」が、そのまま売却時の取得費になるわけではありません。
原則として、被相続人がその株式・投資信託を購入したときの取得価額を引き継ぎます。

たとえば、被相続人が昔に100万円で購入した株式を、相続税申告では500万円で評価したとします。
相続後に相続人が550万円で売却した場合、取得費は原則として500万円ではなく、被相続人の取得費である100万円を基礎として計算します。

このため、相続税申告だけでなく、将来の売却も見据えて、被相続人の購入時の取得価額や取引履歴を確認しておくことが重要です。

NISA口座で保有していた株式・投信にも注意

被相続人がNISA口座で上場株式や投資信託を保有していた場合も注意が必要です。
NISA口座内の上場株式等が相続により払い出された場合、原則として、相続開始日の終値に相当する金額で相続人が取得したものとみなされる取扱いがあります。

通常の課税口座で保有していた株式等とは取得費の考え方が異なる場合があるため、NISA口座の有無、払出日、移管先口座、証券会社から発行される書類を確認する必要があります。

取得費加算の特例

相続または遺贈により取得した株式や投資信託を一定期間内に売却した場合、相続税額のうち一定金額を譲渡資産の取得費に加算できる場合があります。
これを一般に「取得費加算の特例」といいます。

主な要件は、次のとおりです。

【取得費加算の特例の主な要件】

  • 相続または遺贈により財産を取得していること
  • その財産を取得した人に相続税が課税されていること
  • 相続開始日の翌日から、相続税申告期限の翌日以後3年を経過する日までに譲渡していること
  • 確定申告により、所定の計算明細書等を添付して適用を受けること

相続税の申告期限は原則として相続開始を知った日の翌日から10か月以内ですので、取得費加算の特例は、実務上「相続開始から3年10か月以内の売却」が一つの目安になります。

ただし、取得費に加算できる金額は、相続税額の全額ではなく、一定の算式により計算した金額です。
また、特例の適用を受けるためには確定申告が必要ですので、売却前に確認しておくことをお勧めします。

申告で準備しておきたい資料

上場株式や投資信託がある場合、相続税申告では次のような資料を準備しておくとスムーズです。

【必要資料チェックリスト】

  • 証券会社ごとの残高証明書(相続開始日時点)
  • 上場株式の銘柄・株数・取引所の情報
  • 相続開始日、死亡月、前月、前々月の株価資料
  • 投資信託の基準価額・口数・評価額が分かる資料
  • 未収配当金・未収分配金の有無が分かる資料
  • 被相続人の購入時の取得価額・取引履歴
  • 特定口座年間取引報告書
  • NISA口座の有無・払出しに関する証券会社の書類
  • 相続後に売却した場合の売却報告書・取引報告書

まとめ

相続した上場株式や投資信託は、預貯金と異なり、相続税評価・配当金・売却時の譲渡所得・取得費の確認など、複数の税務論点が関係します。

特に重要なのは、次の3点です。

  • 上場株式は、死亡日の終値だけでなく、死亡月・前月・前々月の月平均額も確認すること
  • 投資信託は、商品ごとに評価方法が異なるため、証券会社の資料を確認すること
  • 相続後に売却する場合、取得費は原則として被相続人の取得費を引き継ぐこと

また、相続税が課税されている方が一定期間内に売却する場合には、取得費加算の特例により所得税負担を軽減できる可能性があります。
一方で、特例の適用には期限や申告手続きがあるため、売却前から確認しておくことが重要です。

芦屋相続終活センターでは、税理士・弁護士・司法書士が連携し、相続税申告だけでなく、遺産分割、名義変更、相続後の売却に伴う税務まで一体的にサポートしております。

相続した株式・投資信託の評価や申告でお悩みの方は、お早めにご相談ください。

◇芦屋相続終活センターでは、相続のトラブルから、相続登記を含む相続手続きまで、芦屋に根付いた相続の専門家集団がワンストップ対応致します。

◇公正証書遺言の作成や生前贈与などの生前対策だけでなく、遺産分割協議や遺留分侵害額請求などの相続発生後に生じるトラブルにも対応しています。

◇当センターでは一度に、各専門家と同時にご面談することも可能ですので、各所に行く手間や、同じ資料を各所に送付したり、各所と連絡のやり取りをする手間が省けます。

◇弁護士、税理士、司法書士それぞれが芦屋に事務所を構え、ワンストップで相続終活手続きを行える体制を整えております。

遺産分割
相続登記・相続手続き
相続税申告
遺言・エンディングノート
後見・信託
相続税対策
に関するご相談は芦屋相続終活センターまでお気軽にお問い合わせください。

芦屋相続終活センター
〒659-0093 兵庫県芦屋市船戸町3番25ー302号
0797-90-2744
info@ashiya-souzoku.com

MENU